
ある日、彼女から奇妙なメールが届いた。大事な話があると、信じてもらえないかもしれないけれど本当のことだから今度の週末にゆっくり話を聞いて欲しいと。
いったい何のことなんだ?と思いながら週末に彼女に会って「大事な話って何?」と切り出してみた。
彼女が言うには10年後の俺に会ったと。しかも、あと一日もしないうちに死んでしまう俺に会ったと。
いきなりとんでもない冗談を言うもんだと呆れて聞いていたら、彼女は真顔で言うのでしばらく話を聞いてみることにした。
彼女の話によるとある日突然俺に似たおじさんが現れて、10年後の未来からやって来たと。交通事故なのか死因は本人にもわからないが、自分はあと24時間以内に死ぬことだけはわかっていると。5分しか話せないから君の彼氏にこれから話すことを必ず伝えて欲しいと。
彼女は最初は半信半疑だったらしいが、あまりにもそのおじさんが俺に似ていたのと、我々だけしか知らないことを次々と話すものだから、どうやら本当に未来からやって来たのだと信じるしかなかったのだとか。
そして、5分しか居られないためゆっくり話している時間がないからと、この手帳を俺に渡して欲しいと言って彼女に手渡したと。
その手帳にはこれから10年間に起こる出来事が書かれており、それを読んで俺にこれからの生き方を決めて欲しいと伝えてくれと言った後、突然彼女を強く抱き締めて去っていったという内容だった。
彼女の差し出す手帳を見ながら「マジなのか?こんな話を信じられるか?」と思いながらも手帳を受け取り読んでみた。
驚いたことにどう見ても俺が書いたとしか思えない字だったので頭の中が混乱した。そして、そこに書かれていたのは紛れもなく俺しか知らないことから始まる話でもあったのでますます動揺した。
手帳を読み進めていくうちにその内容に引き込まれていった。あまりにも詳細にこれから起こる出来事の数々が書かれていたため、思わず考え込んでしまった。
これが本当に俺の未来なのか?この手帳に書かれたとおりに俺は生きて死んでしまうのか?
あらかじめ手帳を読んでいた彼女は複雑な顔をして俺をじっと見つめていた。
深く溜め息をついた後、喉が乾いたのでお湯を沸かして二人でコーヒーを飲んだ。
その未来から来たという俺みたいなおじさんはどんな感じだった?と彼女に聞いてみた。
あなたが老けた感じ・・・とだけ彼女が言ったので思わず笑ってしまった。
そうか、老けたおじさんだったのか・・・そう言ってコーヒーを飲みながら自分の中で何かが揺れているのを感じた。
この手帳に書かれた出来事が本当ならば、俺はどうするか。あと10年かぁ・・・微妙な長さだなとぼんやり考えていた。
「24時間+5分」第二話
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